初めてラット実験を目の前で見て吐いた話

 

こんにちは、B2の時化です。

 

たいした話ではないんですが、

夏休みに初めてラット実験を目の前で見て吐いた話

 

を残しておこうかなと思います

 

本当は記事にする気はなかったんですが、

今日ふと「これは書くべきなんじゃ?」と思ったのでささっと書きますね。

 

こういう汚い話や動物実験が苦手な方は今すぐバックを!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

もう大丈夫ですか?話しますよ?

 

 

タイミングが良くてたまたま見学できたラットでの薬物動態実験

 

この夏休み、私は研究室に通って実験やバイトをやらせていただいていました。

 

sike-science.hatenablog.com

 

上の記事で書いた研究室とはまた別の研究室の教授の話を聞きに行く日に

ちょうど教授がラット実験を学生に教えるとのことで、

教授に「見学しますか?」と聞かれたので

私は チャンスだ! と思ってすぐに元気よく「見学したいです!」と返事をしたんです。

 

当日細かいことは知ったんですが、行われる実験は薬物動態実験

流れは大体

 

ラットの重さを量る、尻尾にマジックでマーキングする

マウスに麻酔薬を注射する

ラットの体重をもとに血中濃度が全ての個体で一定になるようにサンプルを調製し、経口投与する

一定時間経過後、採血・採尿する

 

という感じだったと思います。

 

薬物動態を見るときは最近はラットでは行わず、ヒト肝細胞などを使うそうで

その研究室も今回の実験で最後になりそうとおっしゃってました。

 

大学の動物舎に入るのもその時が初めてで、私は見学できるのが嬉しくて前日からわくわくしてたわけなんですが・・・

 

 

いざ目の前で見ると・・・あれ、気分が・・・

 

動物舎内の実験室に入ると、6匹のラットがケージの中でカサコソ動いていました。

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こんな感じの

 

近くで見てもカワイイですし、触ってもふわふわ柔らかい。

 

ほのぼの見てたんですが、それから胸が苦しくなるような光景を目の当たりすることに。。。

 

というか、そもそも具体的にどんな実験するか知らずに見学した私も悪いんです。

 

 

最初に ウッ となったのはラットに麻酔を打つときですね。

 

なんの薬剤かど忘れしてしまったんですが、不可逆的に効く麻酔薬をラットの腹腔内に注射していました。

 

その、注射針を刺す瞬間にラットが「ピギャッ!」と鳴いて全身をビクッとさせるんですよね。

 

↓ こういう風にラットが動き回るので手で押さえながら注射する

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それがラットにとって最後の叫びとなるんです。

人間みたいなリアクションでつい感情移入してしましました。うっ・・・

でもまだ体調が悪くなるほどではありませんでした。

(いやこれまだ初歩)

 

 

 

そしてその後に、採血がしやすいように

ラットを仰向けに寝かせて首のあたりの皮膚をハサミでチョキチョキと切り、

太い血管をピンセットでチョイチョイと手前に引っ張って露出させます

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もうこのあたりでラットのなんとも言えないような血のにおいが鼻にツーンときました

しかも、血管の位置とかは個体差があり、すぐに見つかれば良いのですが

なかなか見つからないときはもっと切ったりピンセットでぐちゃぐちゃと。。。

 

それまでは間近で細かい動作を追いかけてみていたのですが、

だんだん見るのが生理的につらくなってきました

 

こう、胸から喉にかけてなにかが詰まるような感覚がいつのまにかしてきて、気が遠くなりました

 

 

その後、サンプルを経口投与するんですが

 

まず、みなさん経口投与って聞いて普通どう思い浮かべますか?

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↑ 一般の人がすぐ思い浮かべるのって多分こういう感じだと思います

 

 

 

↓ しかしこの実験では

 

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こんな風に注射器を喉の奥にぶっさしてサンプルを注入します。

 

その姿を見ているともう限界まで何かがこみ上げてきて。。。。

 

結局立っているのもままならないくらい気分が悪くなって作業をしているところから離れました。

 

 

本当はずっと見て実験の技術とか学びたかったんですが、

気持ちとは裏腹に身体がもう無理って感じで言うことを聞かなかったです

 

その後、時間をおいて再び実験の様子を見に行ったりしたんですが、

すぐにまた喉の奥からこみ上げてきそうになり、、、

 

 

しかし、動物舎は実験に影響を与えないために清潔にしておかないといけない場所、というのを入る前に聞いていたので

動物舎にいる間はぐっとこらえました笑。

 

動物舎を出たら一刻でも早く!という感じでトイレに行きましたね、

はあ~、ちょうど朝ご飯たべてなくて良かった~我慢できなかったかもしれないので

 

 

ラット・マウス実験は創薬において大切なのは分かっているけど...

 

今回行った実験はまだ浅い方で、腹や頭を開いたりというようなもっと残酷な実験があるのは知っていました。

 

しかし、いざ目の前で見るとインパクトがあって、意識とは裏腹に胸が凄く苦しくなりました。

結局その日は私にとってトラウマっぽいものになり。

 

実際に目の前で見るまでは、

「倫理的問題で動物愛護団体動物実験に反対している」

ということもよく聞いていましたが、他人事のように考えていました。

 

 

色々ぐるぐる考えたんです。

何であんなに気持ち悪くなったんだろう。。。

 

 

ラット、、、マウス、、、

あ、まって、私

ハム太郎大好きじゃん

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そういえば実験があった日の1ヶ月くらい前がハム太郎の誕生日で、LINEのプロフィール画像にしていたくらいでした笑

私の幼少期はハム太郎一色でしたね、そのくらい大好きです♡

 

 

じゃあネズミ以外だったらいいのかと言われると微妙です。

そもそも血が苦手で、そういえば道に落ちてる動物の死体も苦手だし、虫も苦手でした。

 

 

つくづく今の自分がin vivo実験に向いてないんじゃないかと思えてきました。

 

教授によれば「マウス実験は慣れですよ」とのことですが、、、

 

でも生物ならではの複雑性に魅力を感じていて、生物系には行きたいんですよね。

 

またチャンスがあったら、覚悟の上挑戦したいです。研究するために必要ならば。

 

まとめ

 

今回初めて動物実験を見学した日のことについて話しました。

あとから自分がブログを見返した時に、成長を感じるためにも。

 

 

生命倫理について踏み込んで考えるきっかけにもなりました。

 

良い思い出ではありませんが、こういう経験をさせていただいた教授にはとても感謝しています。

やる気満々で来たくせに気分悪くなってダウンしたことに大変申し訳なさも感じていますが笑。

 

くだらなかったところもあったと思いますが、

ここまで読んでくれた皆さん、ありがとうございました。

2ヶ月の研究室体験で学んだこと3つ

皆さんこんにちは、薬学部B2の時化です。

 

夏休みが終わり、怒濤の専門科目の授業と実験実習が始まろうとしています。

 

今年の夏休みは

ほぼ毎日研究室に行き実験をし、空き時間に別研究室のデータ入力バイトをしたりオンライン学会に参加したり、気になる薬学分野の本を咀嚼したりと、

学びの多い日々になりました。

 

もちろん時々ゆっくり休んだり友達と遊んだりサークル活動も出来て、満足しています。

 

本当はブログをたくさん書きたかったのですが、ご飯を食べるのも忘れるほど目の前のことに没頭している日がほとんどでなかなか時間を作り出せず。。。

 

ついに夏休みの終焉を迎えてしまったわけなんですが、これだけは今のうちにブログに残してアウトプットしておきたい!!というテーマがあるので、筆を執ったわけであります。

 

それは...

 

研究室体験で学んだこと3つ!

 

私は研究室配属前なのですが、7月初めから9月中旬まで、興味のある研究室で研究室体験として実験させていただきました。

 

途中で3週間くらいテスト期間があって(コロナの影響でテストが延期された)、実質通った期間はもっと少ないです。

コロナの影響が無ければ4月から研究室体験できたのですが。。。しょうがないです。

 

私が行った研究室は最近話題のmRNA医薬の研究もしている、専ら分子生物学分野の研究室です。

 

1年生の時に核酸医薬について知ってから気になっていて、あと研究室のホームページが良さげだったので、半ば直感で決めました。

 

いやあ~、行って良かった!!

 

何より視野が広がり、実際にプロトコルを立てて実験することで目の前の科学現象の理解が深まりました。

前期授業は座学中心でテスト漬けでしたが、授業内容に一歩踏み込んで考えるきっかけにもなりました。

 

あと、先輩達や先生の研究生活を知れて、議論もたくさん聞くことが出来ました。

 

研究室のものを中心に論文は読みましたが、それでも分からないことだらけで飛び込んでみて、良かったなあと心から思っています。

 

短期間ながらたくさんのことを学んだんですが、今回は大切だと思った3つに絞ってお伝えしたいと思います。

 

未熟な身で、低レベルのことかもしれませんが、少しでも読んでる方のタメになれば幸い、という気持ちで書きます。

 

<目次>

 

1.実験の動作一つ一つに科学がある

 

当たり前だろ!とツッコまれてしまいそうですが、

これは私の想像していたよりもはるかに実験動作・試薬・道具の一つ一つに科学が満ち満ちていたということです。

 

試薬を混ぜる順番、放置する時間と温度、遠心分離機の回転数の違い、優秀な試薬はどういう風に工夫されているのか、どこからどこまでが滅菌処理あるいは遺伝子組み換え操作なのか、、、

 

きっちりその動作でないといけないワケがあったり、逆にココからココくらいまではずれても大丈夫!という範囲があったり、、、

 

ただプロトコルのみを見たら味気ない文字と矢印の羅列に見えるかもしれませんが、一つ一つを見て実践していくととても奥深いものなのだと気づきました。

 

また、操作のメイン目的とは別のところで

「え、そんなとこまで工夫/注意するのか!」

と驚く場面もたくさんありました。

 

例えば、

  • 冷凍した液体試薬は水分が昇華したりしてチューブの蓋あたりに付くため、試薬の濃度を均一にするために遠心しなければいけない(しかし冷凍した大腸菌は重すぎて下にたまってしまうため遠心しない)
  • PCR器が蓋まで温めているのは、気圧差により試料が蒸発するのを防ぐため
  • プレートの培養細胞からSDS-PAGEのサンプルを調製するとき、なるべく細胞を傷つけなようにスクレイパーでこそぎ取るのは、その後の遠心で細胞が壊れたことにより中身のタンパク質が上澄みに来るのを防ぐため

などなど。。。

 あんまり良い例が書けた気がしませんが、実験操作中は色々なことに気を払わないといけない時がある、ということです。

 

意外にも実験を進める上で気をつけなければならないと思ったのが、加える試薬やサンプルの粘性の高さです。

 

粘性が高い試薬を加えると色や屈折率の違いから、チューブの中でどろっとしたものが落ちるのが確認できます。

特に抗体やタンパク質は粘性が高いことが多く、チップに張り付くのでピペットマンで吸って吐いてを繰り返してチップを洗わないといけません。

 

逆にサンプルをSDS処理すると一気にサンプルが粘性を増すので、ちょっとチップの中にSDS-PAGEバッファーが張り付くんですが吸ったり吐いたりしてはいけません。

 

こういうような、粘性を気にする動作が私がやった実験では結構多くて、面白いなあと思いました。

今まで粘性に注目したことがあまりなかったし、紙の上で勉強していても粘性なんて見えてきませんから。

 

 

そして、こうした実験動作や条件検討には実験者個人の人生観によるものもある、ということも教えてもらい、なるほどなあと思いました。

 

たとえばPCRの反応条件を検討するとき。

PCRは、もしターゲットとするプライマー配列と似たような配列が鋳型DNAにあった場合、狙った配列以外のDNAを複製してしまう、等のたくさんの懸念点があります。特に私がやった実験では新しくDNA配列を作ったので、PCRがうまく反応できるかどうか分からないという状況でした。

 

なので、あくまでも遺伝子導入した配列がちゃんと大腸菌の中で組み替えられているかを確認する目安(その後にシークエンサーにかけて確実かどうか確認しました)として、PCRをしたんですが。

 

先生から提示されたPCR条件が2種類あって

 

PCR condition① PCR condition②
94℃ 2min 94℃ 2min
98℃ 10sec 98℃ 10sec
60℃ 30sec 68℃ 30sec…25cycle
68℃ 30sec…30cycle
68℃ 10min 68℃ 10min
4℃ hold 4℃ hold

 緑の文字のところをサイクル反応を行う

 

①の方が②よりアニーリングとポリメラーゼ反応をしているサイクル反応の時間が長く、サイクル数も多いのが分かります。

 

簡単に言えば、

①の方が反応の特異性が低くターゲットと違った生成物を得る可能性が高いが、反応しやすいのでターゲットを生成する可能性も同時に高くなる

 

②の方が反応の特異性が高く反応の誤りが生じる可能性が低いが、狙った反応も進行しにくい

 

この、反応条件を①か②にするかが個人の人生観によるそうです。

 

准教授の先生は後で電気泳動したときにバンドが全然見えないと落ち込むそうなので、①でその時は実験しました。実験によっては②に切り換えることもあるそうです。

 

逆に、望まない反応が起こる可能性を少しでも無くしたいという人もいるでしょう。

 

こういう、どっちもどっちな条件検討の分かれ道がきっとたくさん実験をする上であるんだろうなと思いました。そこに人生観が絡む、という見方をすると面白いし、他人の実験を見るときの視点がまた一つ増えたので知れて良かったです。

 

 

1年生の時に基礎的な実験はしていたのですが、今までの私は実験結果分析やその考察ばかりに目を向けて、実験動作を軽視していたのではないかと気づきました。

 

詳しく実験について解説してくれ、質問にも丁寧に答えてくださった准教授に大感謝です。

 

2.特許がらみの研究の可及的速やかさ

 

私は直接関わっていませんが、先輩が特許がらみの研究を絶賛進行中でした。

 

特許については、授業や本でどれだけ大切なものか、世界中の人がそれを取るためにどれだけ躍起になっているかをある程度知っているつもりでしたが、

そういう研究を身近に見て、セミナーでの実験報告と議論を聞けたのは大きかったのではないかと思いました。

 

とにかく裏付けが取れて、有力なデータを一刻もはやく取って戦略を立てようという感じで、それでも懸念点と向かい合わせ、という印象でした。

 

 

3.徹底的にデータを疑うこと

 

実験報告などで議論を聞いていると、そのほとんどが「疑い」であったことに驚きました。

「このバンド・凝集体は○○○○という可能性はないの?」「△△はあることは確認が取れてるの?」というような質問が目立ったかなあと思います

 

ここからは完全に今の私の見解なんですが。

 

見ている中で実験から得られるデータがシンプルなものが多かったんですよね

SDS-PAGEとかパルスチェイスとかです。

 

なので、きっとそのシンプルさ故に実験結果を得るに至った様々な要因の複雑性が見えにくいんだと思います。

 

だから一つの結果から様々な可能性を一歩踏み込んで考えなくちゃいけない。

逆に言えば、見たい結果を得るためにはその他の可能性を排除していきながら実験しないといけない。緻密な実験計画が必要。

そうしないと「よく分からないデータ」を大量にとってしまいかねない。

 

そして、他の研究グループが出した論文についても「ここのポイントが不自然・怪しい」という風に先生方がよく指摘していて、

 

私には皆さんが目の前のデータを徹底的に疑っているように見えました。

 

そうやって、科学が積み上がっていくのかなあと思いました。

そういえばこの前読んだ本にも繰り返し疑うことの大切さが書かれていましたね。

 

 

sike-science.hatenablog.com

 

 

私も目の前の現象に対して疑いの目が広く持てるようになりたいです。

勉強していく中で、視野を広げ、深い思考をもてるように。

 

私生活では他人のことはまっすぐ受け止めて信じるタイプなんですが笑。

 

まとめ

 

初めて触れた研究室生活は面白かった!

 

本で読んだり話を聞いたりするだけでは得られない様々な経験をさせていただいて、研究室の方々にはとても感謝しています。

 

そして、自分が将来どんな研究がやりたいかも、見えてきた気がします。

それについてはまた今度話そうと思います!

 

ここで話したことは私が行った一つの研究室のことで、研究室の雰囲気とかは十人十色だと思うので参考にならない場合もあると思いますが、

共感や別の意見などをコメントやTwitterでもらえると嬉しいです。

 

ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございました。

 

読書記録「創薬科学入門」

 

テストが終わり夏休みに入り、本を借りてきました!

 

今回紹介するのはこちらです

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創薬科学入門」 改訂2版  佐藤健太郎 著

 

創薬に興味がある、将来創薬がしたいという全ての大学生におすすめしたいです!

 

著者はたくさんの科学系書籍を執筆していて、ウェブサイト「有機化学美術館」の運営者であり、Twitterでも有名なサイエンスライター佐藤健太郎様です!

blog.livedoor.jp

 

この本について一文でいうと、

 

「薬はいかにして創られるか」が著者の製薬会社で研究職として働いていた経験をふまえて系統だてて語られていて、医薬の歴史からこれからの創薬を見据えた本

 

となっています!

 

<目次>

 

本の構成

大雑把な構成は以下のようになります

 

そもそも医薬とは何か、どうあるべきか

創薬の一連の流れとそれを支える技術

医薬のジャンル別解説

抗生物質・抗ウイルス剤/高血圧治療薬/高脂血症治療薬/抗がん剤/糖尿病治療薬/精神病治療薬/鎮痛剤/新しいタイプの薬)

 

加えて話の流れにそって更に踏み込んで用語を解説するコラムがふんだんに盛り込まれていて、飽きずに読めるのもポイントです!

 

章の終わりには要点のまとめが載っていたりしていて

とても整理されていて読みやすい本だと思います!

 

本の特徴

では、この本の特徴を語っていきたいと思います!

 

実際に製薬業界の内側にいた人から語られる創薬

 新しい薬が世に出るまでにはたくさんの工程があって、それに伴いたくさんの人の努力の上に成り立っています。

 

実際に十数年間製薬業界に有機合成の立場から携わった筆者によって語られているため、その仕事がどのくらい大変/難しいのかが読者に伝わりやすく、どんな出来事が業界にとって衝撃だったのかも分かりやすく知れて、製薬業界用語も少し知ることが出来ました!

 

どんな薬にどんな風に市場が広がっているのかも知れるので、

将来製薬業界に携わりたいと思っている人にはもちろん、投資を考えている人にも参考になるのでは、と思いました。

 

それぞれの医薬や技術の長所と短所が明記されていて流れが分かりやすい

ある技術や化合物を紹介する時、論文や研究発表では従来のものや類似物と比べての長所や改善が必要な点がはっきり示されていますが

この本もしっかりそれらが明記されていたのでそれらの技術や薬の関係がすっと頭に入ってきました。

 

「この薬のこの点がこういう仕組みのせいで悪かったからこう工夫してこんな新しい薬が出来た」

というような流れが全部解説されているので、納得しながら読み進めることが出来ました。

 

図や構造式が多くて分かりやすい

下は本書のある1ページなんですが、

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だいたいのページがこんなふうに図がかなりの割合を占めています

 

著者が有機化学者なだけあって、解説される薬のほとんどの構造式が同じページに載っていて、勉強している人にとっては薬のイメージがとても湧きやすいです!

有名な薬・大ヒットした薬の誕生がドラマのように知れる

薬の紹介がたくさん載っていて、その多くが授業で習うような有名な薬だったり、世界中で大量に売れた薬でした!

 

こんな歴史やこんな背景があったのだとか、研究中の偶然や粘り強い研究者の努力も知ることが出来て、

ただ薬の名前を紹介するだけじゃなかったのが良かったです!

(薬の勉強しててほんと思うのですが、薬の名前と少しの特徴だけ説明されてもカタカナ暗記大会になってしまって全然頭に入ってこないんですよね笑)

 

感想

この本、図書館で借りてきたのですが創薬研究のエッセンスが広く詰め込まれていて、買って手元に置いておきたいと思うくらい、読んで良かったです!

 

薬が出来るまでの流れは薬学部の講義で何度か説明されるのですが、私が受けたものは正直さらっとしていて無機質な説明でした。(薬が出来るまで○年かかり、研究初期段階から実際に薬として生み出されるのは○分の一、というような数字ばかり強調されていたり。。。

この本からは薬を患者へ届ける想いや創薬ならではの大変さ、やりがいなどが文中の所々に感じ取れて、身にしみて理解できた気がします。

 

あと、私はブログタイトルにもあるように将来創薬の研究がしたくて勉強しているのですが、「医薬は大量生産出来なければならない」という重要ポイントをいままで軽視してしまっていたことに気がつきました。

 

医薬は患者の命が関わっているので「本日売り切れです。入荷までお待ちください」では済まされないということ、

実験室レベルでは問題なく合成できても、工業レベルで安全に有機合成するにはまた別のメソッドが必要でそれができないとまず新しい薬として承認されないこと、

天然物から取れる化合物を大量合成する大変さ

 

などなど、知れて良かったです!

薬を見たとき、「どんな風に大量合成されてるのか?」という視点を持つことが出来ますしね!

 

そして全体的に無駄の無くて綺麗なのに初学者にも分かりやすい文章で凄いと思いました。

私も文章を書くことが好きでブログを書いていて、ライティングスキルを磨きたいんですがどんな形であれ「人に伝わる文章を書く」ってのはなかなか難しいなあと悩むことばかりです。まあこうして悩むことも好きなんですけど。

 

最近になって佐藤健太郎様を知ったのですが、有機化学者・サイエンスライターとして活躍されていて新しいことにもどんどん挑戦している様子で、とても尊敬しています。

他の著書も読んでみたいと思いました!

 

まとめ

 創薬に興味があったら読んでみよう!

 

私は今薬学部2年生なのですが、専門科目を少し勉強して身についてきたこの時期にちょうどいい読みやすさでしたし、

基本のところから解説してあるので一年生、他分野の方にもおすすめです!

 

ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。

 

専門知識を勉強している段階の身ですので、もし何かご意見・指摘等ございましたらコメントしてくださりますとありがたいです。

第五回ケムステVシンポジウム・座談会に参加しました

先日、第五回ケムステVシンポジウムに参加し、

その後の学生・ポスドク限定のV座談会にも抽選で当たったので参加させていただきました!!

 

参加できて良かった!ほんと、なかなかありませんよこんな機会!!

 

貴重な学びと体験の場を無料で提供してくださったケムステの皆様に感謝です。

 

今回のブログではシンポジウムの軽い感想と、大まかな座談会の雰囲気を伝えようと思います。

 

「V座談会、気になってるけど参加ボタン押せてないんだよな~」

 

という方にとって、ぜひ検討してもらい、参加の後押しとなれたら良いなと思います。

 (というのも、今回の座談会で一部 希望者<定員 となっていてこれはもったいなさ過ぎる…と思ったからです)

 

〈目次〉

 

第5回ケムステVシンポ

www.chem-station.com

 

テーマは「最先端ケムバイオ」

発表者の先生と講演テーマは以下のようになります。

 

浜地 格 先生(京大・工/ERATO 教授)

「生体夾雑系のタンパク質有機化学が目指すもの」

 

安藤 弘宗 先生(岐阜大/G-Chain 教授)

「合成化学で糖鎖の未知を切り開く」

 

山東 信介 先生(東大・工 教授)

「分子設計で実現する次世代バイオイメージング」

 

まさに化学→生物への限界に挑戦した橋渡しの有機化学技術といった感じで、

一部論文発表前の貴重な情報も公開してくださりました。

見所もたくさんあって、すごく面白かったです。。。

 

私はまだ研究室配属前で化学系に行きたいとか生物系に行きたいとかちゃんと決めてるわけではなくて、むしろ分野を狭めずにいろんな学問とか研究に触れていたいのですが最終的に創薬がしたいのは絶対あって、そうなるといろんな機能のある分子を見ると「じゃあ生体に応用したらどうなるの?」ということを考えちゃうわけです

 

薬の材料は主に有機合成でつくられますが、

実験室で普段有機合成が行われる試験管内と生体の中とでは反応の様子や条件が全然違ってきます

 

生体内には標的分子以外にもとてつもなくたくさんの分子がごちゃ混ぜにうごめいていて、且つたくさんの化学反応・構造変化(いわゆる代謝)が絶えず起こっていて

その上に、人間の身体の中は未だ解明されていないことばかりです。

 

つまり、

「生体内で狙った機能を発揮できる分子をつくる」

ことには大きな壁があるわけです。

 

ここの壁を分子を操る有機化学技術でいかに越えていくかの最先端の研究が、今回のVシンポジウムで語られた内容でした。

 

ケムバイオ、面白いなあ

私は今のところ有機化学弱者なんですけど(汗)、

こういう、限界に挑戦して新しい世界を切り開いていくのを見るの凄くわくわくしました。

有機化学のおべんつよ頑張ってやってみよう(n回目)

 

V座談会の様子

 

実は私 V座談会に参加するのはⅡ回目で。

 

sike-science.hatenablog.com

 

前回は第二回のケムステVシンポの後の座談会に参加しました!

今見返したら「ヒナ鳥が口を開けて~」とか書いててウケるんですけど。

本当そうで、皆さん、遠慮せず質問しましょう!

 

V座談会自体は第二回から開催されていて、第三回、第四回も本当は参加したかったのですが予定が合わず、

今回は参加できそうだったので、研究室配属前B2という身分ですが素晴らしい研究成果を残されている先生方のお話が聞きたかったので勇気を出して応募してみました!

 

応募~開始前

 

発表者三名のどの座談会に参加するか選べるのですが、

私は将来創薬をしたいので、面白そうなペプチド創薬の研究もしている山東先生の座談会を選びました!

(まあ、今回のVシンポジウムで山東先生が発表されたテーマはペプチド創薬とは別の分野、小分子による核偏極イメージングだったのでそれについてのお話は聞けなかったのですが、、、、後になって、ペプチド創薬の話も切り出してみるべきだったかなあと後悔はしています)

 

山東先生のペプチド創薬についての記事はこちら↓

park.itc.u-tokyo.ac.jp

(URLは山東研究室ホームページより)

 

前回参加したときはZoomを使っていたんですが、今回のV座談会はSpatial Chatを使ってしました!

このSpatial Chat、私も初めて使ったんですけど

URLさえ分かればアプリのインストールやアカウントの登録なしで使えて、

画面上で自分のアイコンを動かせて近くの人の声は聞こえるが遠くの人の声は聞こえないと言う仕組みになっています!

なので、皆が一つのフィールド上にいたとしても別々の場所に集まればそれぞれ別の話題について話せるという感じです!

 

ただ、20人?近くが同時にマイクとビデオをオンにしていることもあってか通信があまり安定しなくて、私も一回クロームが応答なしになって再度入り直しました(^_^;

 

V座談会が始まり・・・

山東先生の座談会指定エリアにアイコンを移動させて、座談会が始まりました!

 

山東先生+学生・ポスドク5名+ケムステファシリテーターの方1名

というメンバー構成で行われました!

 

まず自己紹介が軽くあって、そのあと参加者が各々質問していくという感じで、

会話が少し空くと山東先生はすごく気さくで話し上手なお方だったので山東先生が参加者の方に話題を振ったり、ファシリテーターの方が会話に沿って山東先生に質問をしたりして

 

座談会の1時間、終始特に会話は途切れることはなく和やかな笑いありの雰囲気で色々なお話を聞くことが出来ました

 

内容としては

今回の研究発表に関する「何で○○を使ったんですか?△△ではどうなりますか?」というような質問から、

山東先生の研究に対する思想・哲学、研究の難しさ・楽しさ、研究室の管理のお話など、幅広かったですね。

 

聞いていて「なるほどなあ」と思うことばかりで、メモがはかどりました。

 

もっとたくさん質問したかったのですが、当日テーマだと知った核偏極について未勉強すぎて質問が浮かばず。。。(別のテーマだと勘違いしてて(^_^;反省です)

 

あとやっぱり、自分の研究を引き合いに出して質問したりできるので配属前はちょっと不利というか話が広げづらいというか、、、

自分が参加する分には貴重なお話が聞けて本当にありがたいですけど、他の参加者にとっては専門性が欠けているので話しづらいのかも知れないなあと思ったりしました

研究室はやく配属したい

 

でも、本当に参加できて良かった!!密度の高い1時間でした!!

 

本当に山東先生、そしてこういう機会を用意してくださったケムステの皆さんには心から感謝しています!

 

座談会終了後

今回はSpatial Chatを使っていたので、座談会が終わりケムステ運営の方がログアウトしても

座談会参加者は参加者同士でそのまま会話し続けられるというシステムになっていました。

 

ここでまた一つ反省があるんですが、私の元々の恥ずかしがり屋の性格が出ちゃいましてすぐSpatial Chatを閉じちゃったんですね。。。

 

でも、座談会の参加者の方で偶然ご縁があった方がいて、

もっとあの場に残って色々話せば良かったな嗚呼ってその後お風呂に入ってるときに思いましたね

 

次、こんな機会あったら恥ずかしがってる場合やないぞと、自分に喝が入りました

 

まとめ

ケムステVシンポ・座談会最高!

 

そして座談会参加を迷っている方に伝えたい、

話し下手B2の私でも素晴らしい体験が出来てなんとかなっているのだから

きっとあなたも大丈夫!

 

また、今日一日を通して強く思ったこととしては

「質問力」をつけたい

ですかね。。。

 

小さい頃から恥ずかしがり屋で質問をするという経験があまりにも少なすぎて(高校時代も全然質問してこなかった)、質問が全然浮かばないんですよね、

大学に入ってから質問する大切さに気づいて、今困ってます

 

クリティカルな部分や他とは違う着眼点を突いたような、そしてその人だからこそ聞けるような、

そんな質問がゆくゆくはすぐ思いつけるようになりたいし、そして質問する勇気も足りてないのでそれも含めて。

 

もちろん質問するにはその内容についてある程度勉強していかないといけないので勉強していきながらだとは思いますが。

 

皆さんが質問する時に何か気をつけていること等ありましたら、コメント欄にでも教えていただけるとありがたいです。

 

ここまで読んでくださってありがとうございました。

 

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追記

 

ケムステVシンポの開催報告でこのブログが紹介されました!

www.chem-station.com

 

ありがとうございました。

読書記録:「科学者を目指す君たちへ」

今回も本の紹介も兼ねて感想を書いていこうと思います

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科学者を目指す君たちへ

~科学者の責任ある行動とは~

 

米国科学アカデミー 編 / 池内 了 訳

 

この本の原版は1989年に書かれていて、科学系の本としてはかなり古いと思います

どんな本か、簡潔に言うと

 

科学者を目指す学生に科学活動の倫理的基礎や研究者が抱えがちな科学者ならではの倫理的問題を取り扱った本

 

です!

具体的に言えば、そもそも科学とはというところから実験データやテクニックの扱い方、出版と公開の意義、著者名の取り扱い、不正行為についてなどなど、科学者のだれもが留意しなければならないテーマを扱っているのではないでしょうか

 

古い本ではありますが、倫理的な内容を扱っているが故に現代にも通ずる内容ばかりです。

 

では、こんな感じで紹介と感想を書いていこうと思います

〈目次〉

 

本の特徴・構成

 

まえがきによればこの本は、

若い研究者が年輩の研究者と共同研究したり、倫理的問題にどう立ち向かっているかをそばで見たりしながら学んでいくのを補助するような、

科学者教育を体系づけた内容になっています。

 

ですので、研究倫理の授業や学会などで使われていることを想定しているそうです。

 

研究倫理・科学倫理が中心的な内容になってくるので、すでに科学の道に進んでいる方は「こんなの当たり前だよ!」と思われる内容が多いかもしれませんが、

 

これから科学の専門家として研究していきたい私にとっては、

この先も心にとどめて研究していきたいなあという言葉ばかりでした。

 

構成としては

テーマごとに倫理的基礎や問題が掲げられた後に、

疑問文で終わるケーススタディが用意されていて周りの人と議論しながら考えることが出来るようになっています。

 

本の幅は約0.7㎜で薄めなので、一気に読み終わると思いますよ!

 

では次に、心に残った言葉を絞って紹介したいと思います

 

心に残った言葉

 

科学的活動の根幹は、自然に対する個人の洞察力にある。

...同時に科学という営みは、孤独で隔絶した真理の探究という一般にイメージされている科学像とは大きく異なり、本来的には社会的な面をもっている。 

 

確かに今でもテレビやアニメ、新聞などのメディアの影響のためか、科学者の言っていることは絶対に正しくて 研究は暗くて狭い部屋で孤独に行われているというイメージがありそうですね

 

でも研究は絶対一人じゃ出来ないし、先人達が今まで積み上げてきた研究結果の上で成り立っている

「巨人の肩に乗ろう」という言葉を聞きますが。

 

そして自然現象を観察し、仮想を立てて検証していくのは個人個人の営みであり、個人は社会の中で生きているわけですから、社会に影響を受けるのもしかるべきでしょう。

 

 

科学手法は間違いが生じやすいことから、科学において疑うと言うことの重要性を心に刻んでおく必要がある。 

 

 科学は何らかの方法で自然現象を観測し、検証していかなければなりませんが、研究手法は時間が経つにつれて進化していくので、

 

当時はそれが最善策で正しいとされていても後々研究手法が進化したことにより間違いと判明することが多いそうです。

 

 

科学的な発見に無形の影響を与える多くの要素、たとえば好奇心、直感、創造性などは、ほとんど論理的に説明できない 

...価値観と科学は切り離せないし、そうすべきでもない

 

去年受けた自然史の授業でも、偉大な発見をした科学者の中にはとがった先入観をもっていた人が多くいるという説明を受けました。(コペルニクスガリレオ、リンネなど)

 

偉大な発見というのは言い換えれば当時誰もが考えられなかったものなので、大衆とはかけ離れたとがった価値観をもっていたからこそ発見できたのではないかということです。

 

もちろん価値観は研究結果に悪い影響を与える場合も多いですが

切り離すことは出来ないのだ、と考えることでその研究の背景まで見ようと思いますし、これからも留意していきたいと思う言葉です。

 

 

ひとつの科学的結果は、本質的に暫定的なものである。科学者は、自然の物質世界のある側面を完全かつ正確に記述していると、はっきりと証明することができないからだ。その意味で、すべての科学の結果には、間違いがつきまとっていると考えたほうがよい

 

最後の一文、かなり強くないですか。

この本には繰り返し疑うことの大切さが書いてあって、逆に「他人にいかに研究結果を信頼してもらえるか」についても書いてあります。深いですよね

 

ノーベル賞受賞者の言葉にも「教科書を疑え」というようなものが良くあったのですが実感が湧かず、「ふ~ん」って感じだったんですが、

この本を読んで研究者にとって疑うことがいかに大切かを知ることができました。

 

まとめ

 

研究倫理の授業とかうちの大学にあるのかなあ、わからないけど

 

タイトル通り、研究者を目指す学生は目を通しておいて損はないとおもいました!

 

私は一人で読みましたが、周りの人とケーススタディについて議論しながら読むのが理想的ですね!

 

(明日テスト。。。)

読書記録:「行動しながら考えよう」

今回は本を読んだ感想などをまとめていきたいと思います

大学の図書館が使えるようになり、本を借りてきました!

 

ご紹介するのはこちら↓

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「行動しながら考えよう」 著者:島岡要 (羊土社)

 

タイトルに惹かれて、私も行動しながら考えられる人になりたかったので読み始めました。

 

どんな本なのかを簡潔に言うと、

「研究活動をする上で、人間関係や将来への不安などの様々な悩み事を解決に導き、不確実な未来に向けて手探りをしていきながら行動してみませんか」

という本です。

 

我々は「よく考え、理解してから行動せよ」という風に教育される人が多いと思いますが、

研究とはそもそも未発見のことを解明することであるので先の先まで理解することなど不可能です。加えて不確実なことばかりな世の中、行動しながら試行錯誤していく力が求められているのではないでしょうか。

 

しかしながら、研究のリーダーシップを取っている人にとっては研究を進めるにつれて常にリスクが伴います。(研究費やポスト、周りの一緒に研究している人のことなど。。。)

それらが不安で前に進めない研究者も多いそうです。

 

そこで、ハーバード大学で長い研究生活を送り、たたき上げで理系研究者として鍛えてきて現在三重大学で教授として医学研究をしている著者が、典型的な研究者の持つ悩みをピックアップして経験を元にアドバイスをし、行動しながら考えるメソッドなど研究生活で役立つと思われる情報をまとめているのがこの本です。

 

著者は過去に「やるべきことが見えてくる研究者の仕事術」(羊土社)、「研究者のために思考法」(羊土社)という本を出しています。

 

それでは、本の構成や私がなるほど!と思ったポイントをしぼってまとめていきたいと思います

 

〈目次〉

 

本の構成・特徴

構成としては

序章:悩める若手研究者とその卵達12のケース

  ↓

本章

1.行動しながら考えよう

2.ネガティブな感情を活用しよう

3.研究者は営業職。視点を切り替えよう

4.研究室で自分の立ち位置を分析してみよう

5.情報社会だからこそ「暗記力」を強みにしよう

6.新しいことをはじめてみよう

7.戦略に楽観主義になろう

 

 といった感じで、

まず最初に筆者が仮想的に人物設定をした若手研究者にありがちな12の悩み事を紹介し、それに対するクイックアンサーを出しています。

 

その後、本章ではそれらの悩み事の根本的な解決につながるような筆者の主張が、体験談付きで詳しく語られています。

 

本章を読むことで、筆者がタイトルにしている「行動しながら考えよう」が具体的にどういうことを言っているのか、分かると思います。

 

とりあえず、序章の12の悩み事ケースを読んで少しでも共感できたら読む価値があるでしょう。

 

本の全体的な特徴としては、筆者のアメリカでの経験がふんだんに語られているので留学を考えている人にとって参考になると思われます。

 

また、難しい言葉づかいとか専門用語が少ない印象で、研究生活をまだ経験していない私にとってもすごく分かりやすかったです!

 

取り扱っているのが研究生活の悩み事ということで研究室配属前の私にとってはまだ早いかなと最初思いましたが、この本を読んで研究生活や研究職のキャリアのイメージを具体的に知ることが出来、読んで良かったと思っています。

 

そしてあとがきによれば、“若手研究者やその卵”の悩みと序章には書いてありますが、同時にその指導者層に対してこういう風にアドバイスした方がいいよ、と伝える本でもあるそうです。

 

なので、これから研究生活を送っていくほとんど全ての人におすすめなのではないかと思われます。

 

では、これから私が特になるほど!と思ったポイントを紹介していきますね。

 

なるほどポイント1:研究者は営業職である

 

このワードはかなり力があるんじゃないかなと思ってます。

 

ダニエル・ピンク氏の著書「To sell is human」の中にある、「社会人は誰しもが広い意味でセールスマンである」という言葉を研究職においても当てはめた場合、

研究者の抱える多くの問題がセールスマン問題に関連していると筆者は述べています。

 

この場合、近い顧客としては学部生や院生の場合は直属の研究指導者や教授、企業研究者の場合は上司、PI(研究室主宰者)の場合は論文や研究費申請書の査読者や評価者となる。

 

遠い顧客(創薬研究者で言えば、世界中の病気に困っている人達)の役に立ちたいと考えるならば、まずはゲートキーパーである近い顧客を攻略しなければならない。

 

そのために与えるべきなのはニーズに沿った顧客にとっての最大限の利益であり、正論ではない。

しかし、近い顧客へ最適化しすぎるがあまり、本当に救いたい遠い顧客の利益に反するものであってはならない。

 

・・・とても納得できました。

世界を動かしているのはやはり人であり、世界を変えたいと思ったらまず人を変えなければ、そして人の心を動かすのは営業の心ということで。

 

私、大学は入る前までは人と蜜に関わる営業職とか性格的に絶対無理だと思ってたんですが、

そんな殻を破ってみようと思って大学入学後は人とたくさん関わってプロジェクトを進めるようなサークルに入ったり、お客さんとの距離が近いちいさな和食屋さんでバイトしたりして、

「営業の心」を少しは学んで成長できたのではと思ってるので、今までの経験が活かせたら良いなと思いました。

 

なるほどポイント2:理性は感情の奴隷である

 

「理性は感情の奴隷である」これはイギリスの哲学者デビット・ヒュームの言葉で、

人生の重要な判断を下す心のプロセスは常に感情が主役で理性は脇役ということです。

 

例として、就職先や交際相手など、判断基準を定量化しにくい選択をするとき、どうしても最後には直感らざるをえないことが挙げられます。

 

また、ノーベル賞受賞者はよく「好奇心を大切に」と言いますが、好奇心も理屈では語られません。

 

重要な判断の根底には理屈ではなく感情があると考えれば、世界もまた違って見えますね。

感情が強い人は合理的な理由付けは後付けにしてでもエイヤー!っと突き進めることができるということです。

 

思い返せば私も色々と理由付けはしたものの、大事なところでは好き嫌いや直感のままに行動している気がします。そうすると後悔があまり産まれないんですよね。

「薬がすき、良い薬を創りたい」という思いもほぼ直感的なもので、理屈なんてありません。

 

なるほどポイント3:重要なフォロワーシップ

 

この本にはPI(研究室主宰者)がどのように振る舞うべきかに加えて、それに従うフォロワーがどのようにあるべきかについても書いてありました。

 

筆者によれば、

研究はリーダーを中心にそれに従う形でフォロワーがまわっているのではなく、チームの目標を中心にリーダーとフォロワーがまわっている

リーダーに指示されたことを完遂するだけでなく、更に主体的に動いて付加価値を与えることでチームが生産的になる。

 

本質的に不確実性が多い研究活動では細かい指示やマニュアルが作りにくいので、フォロワーとしての主体的な立ち回りもとても重要になってくるということですね!

 

まとめ

 

 悩みを持つ様々な層の研究者に向けられた、背中を押してくれる一冊!

 

今回記事に書いたこと以外にも胸に響く言葉も多くあり、後々自分の立場が変わったらまた読み返したいです。

 

最後に、私が胸を打たれた、自らのグランドデザイン(白紙から研究活動を構想したもの)を実行すると覚悟した時の文章を添えます。

 

いつまで自分の知的好奇心が持続するか分からない。いつかアイデアは枯渇してしまうかもしれないが、そのときまではやってみよう。自分で行ったグランドデザインが上手くいく保証はないが、失敗であったと分かるまでやってみよう。

 

内藤記念くすり博物館に行ってきました

先日、岐阜県各務原市にある内藤記念くすり博物館に行ってきました。

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内藤記念くすり博物館 外観

一言で感想を言えば、大満足です。

ちょっと行きにくかったけど、行って良かった!!

 

入館無料なのにコンテンツが盛りだくさんで、行く途中少々トラブルがあって着いたのが閉館1時間半前だったのですが、

急ぎ目かつしっかり見て1時間半でなんとかまわりきりました。

 

本当は春休みに行く予定だったのですがコロナでずっと休館で、6月2日から感染対策をした上で再開とのことで中間テスト明けに行ってきました。

 

今回はこんな感じでゆる~くレポートしていきたいと思います。

 

 

 内藤記念くすり博物館とは?

www.eisai.co.jp内藤記念くすり博物館とは、1971年にエーザイ創始者:内藤豊次によって開設された博物館です。

 

展示室は医薬の歴史を太古の昔から近代にかけて詳しく見ることが出来る常設展示と、一年に一回テーマを変える企画展示があり、私が行ったときは「麻酔薬の歩みと華岡青洲」でした。

 

3Fには内藤豊次の生涯とエーザイの歴史が取り扱われている社史コーナーや認知症コーナー、DVDシアター(行ったときはコロナのため使用不可)がありました。

 

施設内には他に

  • 医薬・薬学書を中心にした図書館(要予約)
  • 薬草園
  • 薬木園
  • 温室

が併設されています。

図書館と温室は感染症対策のため私が行ったときは使えなかったです。

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ではこれから私がまわった順に感想などを書いていきますね。

 

1F・2F 常設展示:医薬の歴史

まず玄関にはいるとロビーに迫力ある木製の装置がありました!

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どうやらこれは江戸時代頃に使われた効率良く薬草を粉々にするための装置だそうで、ハムスターの回し車のようにこの大きな円形の木枠の中に人が入ってまわすそうです。楽しそう。

 

常設展示の入り口には白沢が。

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白沢

白沢とは古代中国の想像上の神獣で、病魔を防ぐという言い伝えがあるそうです。

あの鬼灯の冷徹に出てくる白澤様のモチーフですね~

白沢の他にも神農、少彦名命(すくなひこな)などの古代の薬学・医学の神様の絵や像がたくさんありました。

 

次にあったのが漢方や民間薬などの歴史ある薬東洋医学の歴史などが紹介してありました。

生薬もたくさん飾ってあったけど東洋医学を勉強するサークルに入っているので大抵は私にとって見慣れたものでした(^_^;王道の生薬といいますか。

 

次には、薬関係の商売をしていた人達のマネキンがありました。

富山の薬売り越後の毒消し売りなどなど、、、

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昔の薬の商売をしてる人たち

その奥には薬の商売をしていた人達の道具や資料がたくさんありました。

ここらへんで特に私が気になったのは江戸時代の病薬道戯鏡という、病気と薬の名前を人名のように記して番付表にしたものですね。あの、歴史の教科書に出てくる番付表みたいな見た目です。

それを見ることによって当時恐れられていた病気とそれに対する薬が分かるという、面白い資料でした。

 

その次のコーナーは蘭方医学の伝来ということで、徐々に西洋医学を取り入れていった日本の様子が見れます。

オランダ船にのって薬や酒を運んだオランダ徳利、解体新書、日本で初めての西洋薬、初めての目薬などなど、、、

養生訓という、健康に人生を楽しむ教えが載ってる資料があって、現代にも通じて響くと思われる文章がたくさん書いてあって良いなあと思いました。

 

そこから二階に上がるとまず近代の薬が出てきて、ジェンナーコッホパスツールなどの人物ごとにパネルがあって業績が紹介されていて、当時使われた薬のパッケージや道具が飾ってありました。

サリチル酸も置いてあって。前から思ってたんですけどサリチル酸って漢字だと「撒酸」とか「撒里失兒酸」って書くの、かっこよくないですか?Tシャツ欲しいくらいです。

 

その横には海外コレクションがあって、ドイツやフランスの薬壷や乳鉢などがありました。見た目も綺麗で国ごとに違いがあるのも面白かったです。

 

ここで「おおおお!!」となったのが紀元前2200年頃の世界最古の処方箋(の複製)。

粘土板にシュメール人の文字が書かれていました。12以上の処方が書かれているそうで、飲みにくいときはビールと一緒に飲めって書いてあるそうです笑

 

その横にはたくさんの昔の薬入れとかはかり、薬棚がありました。

 

最後に日本薬局方の歴史を見て、常設展は終わりました。

 

めちゃくちゃパネルの説明が丁寧で、面白いものがたくさんありましたねえ

 

2F 企画展示:麻酔薬の歩みと華岡青洲

1年ごとにテーマがかわるそうで、今回は「麻酔薬の歩みと華岡青洲

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つい数日前にあった薬理学の中間テストの範囲に局所麻酔薬があって、私にとってはタイムリーなテーマでした。

 

東西の麻酔法の歴史、華岡青洲がどのように全身麻酔薬を開発したのか、近現代の麻酔法はどのようにして開発されていったかが資料とともにわかります。

 

本当にパネルが丁寧でですね、麻酔薬とは何か?局所麻酔薬、全身麻酔薬とは?そもそも痛みとは?というところから解説されています。

 

これみて華岡青洲が好きになったのでちょっと聞いてください。

 

華岡青洲外科医で、勉学への熱意が強く、勉強を始めると寝食を忘れて没頭し、珍しい処方や優れた技術を持つひとがいるときけば指導を受けに行ったらしい。見習いたいもんです。

万病一毒説をとなえた吉益東洞の長男、吉益南涯からも学んでいたそうです。

 

あるとき清州は、当時不治の病とされていた乳がんが外科手術によって治せるとオランダの医学書に書いてあることを知りますが、患者が痛みに耐えられないだろうと考え、手術を断念したそうです。

しかし、「痛みを取り除くことが出来れば、手術により今まで治療できなかった病気も治せるのでは?」と考え、全身麻酔薬の開発研究を始めたそう。

 

そして、曼荼羅花・烏頭・ビャクシ・当帰・センキュウ・天南星の六味による麻沸散(後の通仙散)が開発されました。

対象が乳がんで患者は女性なので、女性でも飲みやすいように剤形を工夫したそうです(ここにちょっとキュンとしてしまう)

そして正確な記録が残っている点で世界初の全身麻酔による乳がん手術が成功!!

麻酔薬のおかげで手術による可能性が広がっていったわけですね。

 

くわしくはぜひ博物館へ・・・・!

 

3F エーザイ社史コーナーなど

3Fにはエーザイの社史コーナーがありました。

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創業者である内藤豊次の生涯とエーザイがどんどん大きくなっていった経緯がかいてありました。

個人的に運命感じたのは、豊次が中学時代(今でいう高校?)に読んだスマイルズ「自助論」に感銘を受け、それ以降座右の銘を「天は自ら助くる者を助く」にしていたことです。

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サミュエル・スマイルズ著「自助論」

私も高2のときにこれ読んですごい、頭を殴られたような衝撃を受けました。。。

とりあえず、一文一文が名言って感じで、功績を残した偉人達のエピソードをこれでもかというほどふんだんに載せて読者に努力の素晴らしさを説くっていう印象です

今の私は「この本厳しすぎなんじゃないの」と思いますが。

とりあえずおすすめの自己啓発書をきかれたらまずこれが浮かびます。

 

おっと、本の紹介はこれぐらいにして。。。

 

同じフロアには豊次の息子で前社長だった内藤裕次の特別展示と、認知症に関するパネル展示がありました。

 

薬木園・薬草園

とにかく広かった!!!!!

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薬木園 外観

とりあえず花が咲いていたのを見せますね~

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アマチャ

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キキョウ

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トウキ

 

また、かぜ・頭痛・めまいなど、症状別にきく薬草が区画分けされてて面白いなと思いました。

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頭痛にきく薬草

 

有毒植物コーナーもありましたよ!   

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有毒植物コーナー

ジギタリスやドクニンジンなど色々ありましたね。

薬用植物の他にもハーブとかいろいろ植えてありました!

すぐそばには温室がありましたがコロナの影響で閉館してました、また今度見に行きたいです~!

 

アクセス

これが個人的にはあまりよろしくないように思えて、行きはグーグルマップで調べたんですけど良い電車やバスの便がなくて「見学する時間がなくなっちゃう~!」と思ったので途中からタクシー使いました。

まわりは工場とか倉庫で田舎って感じだったので。

 

着く直前になって博物館のホームページにアクセス書いとるやん、と気づきました(;´Д`) 

時間的にも値段的にもホームページに載ってる方法で行くのがおすすめです!

 

博物館前に一応バス停はありましたけど、3時間に一回ぐらいしか便がなかったです

帰りはそのホームページとパンフレットに書いてある方法で、30分くらい?歩いて川島口というバス停に行き、そこから30分おきに出ていた名鉄バス名鉄一宮駅まで行き、無事帰り着きました。

 

まとめ

内藤記念くすり博物館は薬学の歴史の宝庫!!

 

何度も言いますが入館無料なのにパネル説明は丁寧で展示室も綺麗でもちろん展示品も素晴らしくて、たくさんの学びをくれる空間でした。

 

 わたしは創薬研究者を目指していて、未来のことを明らかにするのだから研究者にとって過去の歴史は知る必要がない!と考える人もいると思いますが、

いかにして薬が開発されてきたのか、薬が開発される前後で何がどう変わったのか、薬と人はどのような結びつきを得てここまできたのか、などなどを知るのは、未来を見据える研究者にとって大切なことなんじゃないかな、とまだまだ卵の身ですが思ったりしてます。

 

単純に私は「」という存在そのものが大好き、というのもありますが。

 

とても貴重な経験をさせていただき、内藤記念くすり博物館に関わっている方々に感謝です。

 

常設展の入り口の方に「写真撮影OK!」と書いてあったので一部写真を公開していますが何か問題がありましたら消そうと思います。

 

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。