読書記録:「行動しながら考えよう」
今回は本を読んだ感想などをまとめていきたいと思います
大学の図書館が使えるようになり、本を借りてきました!
ご紹介するのはこちら↓
「行動しながら考えよう」 著者:島岡要 (羊土社)
タイトルに惹かれて、私も行動しながら考えられる人になりたかったので読み始めました。
どんな本なのかを簡潔に言うと、
「研究活動をする上で、人間関係や将来への不安などの様々な悩み事を解決に導き、不確実な未来に向けて手探りをしていきながら行動してみませんか」
という本です。
我々は「よく考え、理解してから行動せよ」という風に教育される人が多いと思いますが、
研究とはそもそも未発見のことを解明することであるので先の先まで理解することなど不可能です。加えて不確実なことばかりな世の中、行動しながら試行錯誤していく力が求められているのではないでしょうか。
しかしながら、研究のリーダーシップを取っている人にとっては研究を進めるにつれて常にリスクが伴います。(研究費やポスト、周りの一緒に研究している人のことなど。。。)
それらが不安で前に進めない研究者も多いそうです。
そこで、ハーバード大学で長い研究生活を送り、たたき上げで理系研究者として鍛えてきて現在三重大学で教授として医学研究をしている著者が、典型的な研究者の持つ悩みをピックアップして経験を元にアドバイスをし、行動しながら考えるメソッドなど研究生活で役立つと思われる情報をまとめているのがこの本です。
著者は過去に「やるべきことが見えてくる研究者の仕事術」(羊土社)、「研究者のために思考法」(羊土社)という本を出しています。
それでは、本の構成や私がなるほど!と思ったポイントをしぼってまとめていきたいと思います
〈目次〉
本の構成・特徴
構成としては
序章:悩める若手研究者とその卵達12のケース
↓
本章:
1.行動しながら考えよう
2.ネガティブな感情を活用しよう
3.研究者は営業職。視点を切り替えよう
4.研究室で自分の立ち位置を分析してみよう
5.情報社会だからこそ「暗記力」を強みにしよう
6.新しいことをはじめてみよう
7.戦略に楽観主義になろう
といった感じで、
まず最初に筆者が仮想的に人物設定をした若手研究者にありがちな12の悩み事を紹介し、それに対するクイックアンサーを出しています。
その後、本章ではそれらの悩み事の根本的な解決につながるような筆者の主張が、体験談付きで詳しく語られています。
本章を読むことで、筆者がタイトルにしている「行動しながら考えよう」が具体的にどういうことを言っているのか、分かると思います。
とりあえず、序章の12の悩み事ケースを読んで少しでも共感できたら読む価値があるでしょう。
本の全体的な特徴としては、筆者のアメリカでの経験がふんだんに語られているので留学を考えている人にとって参考になると思われます。
また、難しい言葉づかいとか専門用語が少ない印象で、研究生活をまだ経験していない私にとってもすごく分かりやすかったです!
取り扱っているのが研究生活の悩み事ということで研究室配属前の私にとってはまだ早いかなと最初思いましたが、この本を読んで研究生活や研究職のキャリアのイメージを具体的に知ることが出来、読んで良かったと思っています。
そしてあとがきによれば、“若手研究者やその卵”の悩みと序章には書いてありますが、同時にその指導者層に対してこういう風にアドバイスした方がいいよ、と伝える本でもあるそうです。
なので、これから研究生活を送っていくほとんど全ての人におすすめなのではないかと思われます。
では、これから私が特になるほど!と思ったポイントを紹介していきますね。
なるほどポイント1:研究者は営業職である
このワードはかなり力があるんじゃないかなと思ってます。
ダニエル・ピンク氏の著書「To sell is human」の中にある、「社会人は誰しもが広い意味でセールスマンである」という言葉を研究職においても当てはめた場合、
研究者の抱える多くの問題がセールスマン問題に関連していると筆者は述べています。
この場合、近い顧客としては学部生や院生の場合は直属の研究指導者や教授、企業研究者の場合は上司、PI(研究室主宰者)の場合は論文や研究費申請書の査読者や評価者となる。
遠い顧客(創薬研究者で言えば、世界中の病気に困っている人達)の役に立ちたいと考えるならば、まずはゲートキーパーである近い顧客を攻略しなければならない。
そのために与えるべきなのはニーズに沿った顧客にとっての最大限の利益であり、正論ではない。
しかし、近い顧客へ最適化しすぎるがあまり、本当に救いたい遠い顧客の利益に反するものであってはならない。
・・・とても納得できました。
世界を動かしているのはやはり人であり、世界を変えたいと思ったらまず人を変えなければ、そして人の心を動かすのは営業の心ということで。
私、大学は入る前までは人と蜜に関わる営業職とか性格的に絶対無理だと思ってたんですが、
そんな殻を破ってみようと思って大学入学後は人とたくさん関わってプロジェクトを進めるようなサークルに入ったり、お客さんとの距離が近いちいさな和食屋さんでバイトしたりして、
「営業の心」を少しは学んで成長できたのではと思ってるので、今までの経験が活かせたら良いなと思いました。
なるほどポイント2:理性は感情の奴隷である
「理性は感情の奴隷である」これはイギリスの哲学者デビット・ヒュームの言葉で、
人生の重要な判断を下す心のプロセスは常に感情が主役で理性は脇役ということです。
例として、就職先や交際相手など、判断基準を定量化しにくい選択をするとき、どうしても最後には直感らざるをえないことが挙げられます。
また、ノーベル賞受賞者はよく「好奇心を大切に」と言いますが、好奇心も理屈では語られません。
重要な判断の根底には理屈ではなく感情があると考えれば、世界もまた違って見えますね。
感情が強い人は合理的な理由付けは後付けにしてでもエイヤー!っと突き進めることができるということです。
思い返せば私も色々と理由付けはしたものの、大事なところでは好き嫌いや直感のままに行動している気がします。そうすると後悔があまり産まれないんですよね。
「薬がすき、良い薬を創りたい」という思いもほぼ直感的なもので、理屈なんてありません。
なるほどポイント3:重要なフォロワーシップ
この本にはPI(研究室主宰者)がどのように振る舞うべきかに加えて、それに従うフォロワーがどのようにあるべきかについても書いてありました。
筆者によれば、
研究はリーダーを中心にそれに従う形でフォロワーがまわっているのではなく、チームの目標を中心にリーダーとフォロワーがまわっている。
リーダーに指示されたことを完遂するだけでなく、更に主体的に動いて付加価値を与えることでチームが生産的になる。
本質的に不確実性が多い研究活動では細かい指示やマニュアルが作りにくいので、フォロワーとしての主体的な立ち回りもとても重要になってくるということですね!
まとめ
悩みを持つ様々な層の研究者に向けられた、背中を押してくれる一冊!
今回記事に書いたこと以外にも胸に響く言葉も多くあり、後々自分の立場が変わったらまた読み返したいです。
最後に、私が胸を打たれた、自らのグランドデザイン(白紙から研究活動を構想したもの)を実行すると覚悟した時の文章を添えます。
いつまで自分の知的好奇心が持続するか分からない。いつかアイデアは枯渇してしまうかもしれないが、そのときまではやってみよう。自分で行ったグランドデザインが上手くいく保証はないが、失敗であったと分かるまでやってみよう。