2ヶ月の研究室体験で学んだこと3つ

皆さんこんにちは、薬学部B2の時化です。

 

夏休みが終わり、怒濤の専門科目の授業と実験実習が始まろうとしています。

 

今年の夏休みは

ほぼ毎日研究室に行き実験をし、空き時間に別研究室のデータ入力バイトをしたりオンライン学会に参加したり、気になる薬学分野の本を咀嚼したりと、

学びの多い日々になりました。

 

もちろん時々ゆっくり休んだり友達と遊んだりサークル活動も出来て、満足しています。

 

本当はブログをたくさん書きたかったのですが、ご飯を食べるのも忘れるほど目の前のことに没頭している日がほとんどでなかなか時間を作り出せず。。。

 

ついに夏休みの終焉を迎えてしまったわけなんですが、これだけは今のうちにブログに残してアウトプットしておきたい!!というテーマがあるので、筆を執ったわけであります。

 

それは...

 

研究室体験で学んだこと3つ!

 

私は研究室配属前なのですが、7月初めから9月中旬まで、興味のある研究室で研究室体験として実験させていただきました。

 

途中で3週間くらいテスト期間があって(コロナの影響でテストが延期された)、実質通った期間はもっと少ないです。

コロナの影響が無ければ4月から研究室体験できたのですが。。。しょうがないです。

 

私が行った研究室は最近話題のmRNA医薬の研究もしている、専ら分子生物学分野の研究室です。

 

1年生の時に核酸医薬について知ってから気になっていて、あと研究室のホームページが良さげだったので、半ば直感で決めました。

 

いやあ~、行って良かった!!

 

何より視野が広がり、実際にプロトコルを立てて実験することで目の前の科学現象の理解が深まりました。

前期授業は座学中心でテスト漬けでしたが、授業内容に一歩踏み込んで考えるきっかけにもなりました。

 

あと、先輩達や先生の研究生活を知れて、議論もたくさん聞くことが出来ました。

 

研究室のものを中心に論文は読みましたが、それでも分からないことだらけで飛び込んでみて、良かったなあと心から思っています。

 

短期間ながらたくさんのことを学んだんですが、今回は大切だと思った3つに絞ってお伝えしたいと思います。

 

未熟な身で、低レベルのことかもしれませんが、少しでも読んでる方のタメになれば幸い、という気持ちで書きます。

 

<目次>

 

1.実験の動作一つ一つに科学がある

 

当たり前だろ!とツッコまれてしまいそうですが、

これは私の想像していたよりもはるかに実験動作・試薬・道具の一つ一つに科学が満ち満ちていたということです。

 

試薬を混ぜる順番、放置する時間と温度、遠心分離機の回転数の違い、優秀な試薬はどういう風に工夫されているのか、どこからどこまでが滅菌処理あるいは遺伝子組み換え操作なのか、、、

 

きっちりその動作でないといけないワケがあったり、逆にココからココくらいまではずれても大丈夫!という範囲があったり、、、

 

ただプロトコルのみを見たら味気ない文字と矢印の羅列に見えるかもしれませんが、一つ一つを見て実践していくととても奥深いものなのだと気づきました。

 

また、操作のメイン目的とは別のところで

「え、そんなとこまで工夫/注意するのか!」

と驚く場面もたくさんありました。

 

例えば、

  • 冷凍した液体試薬は水分が昇華したりしてチューブの蓋あたりに付くため、試薬の濃度を均一にするために遠心しなければいけない(しかし冷凍した大腸菌は重すぎて下にたまってしまうため遠心しない)
  • PCR器が蓋まで温めているのは、気圧差により試料が蒸発するのを防ぐため
  • プレートの培養細胞からSDS-PAGEのサンプルを調製するとき、なるべく細胞を傷つけなようにスクレイパーでこそぎ取るのは、その後の遠心で細胞が壊れたことにより中身のタンパク質が上澄みに来るのを防ぐため

などなど。。。

 あんまり良い例が書けた気がしませんが、実験操作中は色々なことに気を払わないといけない時がある、ということです。

 

意外にも実験を進める上で気をつけなければならないと思ったのが、加える試薬やサンプルの粘性の高さです。

 

粘性が高い試薬を加えると色や屈折率の違いから、チューブの中でどろっとしたものが落ちるのが確認できます。

特に抗体やタンパク質は粘性が高いことが多く、チップに張り付くのでピペットマンで吸って吐いてを繰り返してチップを洗わないといけません。

 

逆にサンプルをSDS処理すると一気にサンプルが粘性を増すので、ちょっとチップの中にSDS-PAGEバッファーが張り付くんですが吸ったり吐いたりしてはいけません。

 

こういうような、粘性を気にする動作が私がやった実験では結構多くて、面白いなあと思いました。

今まで粘性に注目したことがあまりなかったし、紙の上で勉強していても粘性なんて見えてきませんから。

 

 

そして、こうした実験動作や条件検討には実験者個人の人生観によるものもある、ということも教えてもらい、なるほどなあと思いました。

 

たとえばPCRの反応条件を検討するとき。

PCRは、もしターゲットとするプライマー配列と似たような配列が鋳型DNAにあった場合、狙った配列以外のDNAを複製してしまう、等のたくさんの懸念点があります。特に私がやった実験では新しくDNA配列を作ったので、PCRがうまく反応できるかどうか分からないという状況でした。

 

なので、あくまでも遺伝子導入した配列がちゃんと大腸菌の中で組み替えられているかを確認する目安(その後にシークエンサーにかけて確実かどうか確認しました)として、PCRをしたんですが。

 

先生から提示されたPCR条件が2種類あって

 

PCR condition① PCR condition②
94℃ 2min 94℃ 2min
98℃ 10sec 98℃ 10sec
60℃ 30sec 68℃ 30sec…25cycle
68℃ 30sec…30cycle
68℃ 10min 68℃ 10min
4℃ hold 4℃ hold

 緑の文字のところをサイクル反応を行う

 

①の方が②よりアニーリングとポリメラーゼ反応をしているサイクル反応の時間が長く、サイクル数も多いのが分かります。

 

簡単に言えば、

①の方が反応の特異性が低くターゲットと違った生成物を得る可能性が高いが、反応しやすいのでターゲットを生成する可能性も同時に高くなる

 

②の方が反応の特異性が高く反応の誤りが生じる可能性が低いが、狙った反応も進行しにくい

 

この、反応条件を①か②にするかが個人の人生観によるそうです。

 

准教授の先生は後で電気泳動したときにバンドが全然見えないと落ち込むそうなので、①でその時は実験しました。実験によっては②に切り換えることもあるそうです。

 

逆に、望まない反応が起こる可能性を少しでも無くしたいという人もいるでしょう。

 

こういう、どっちもどっちな条件検討の分かれ道がきっとたくさん実験をする上であるんだろうなと思いました。そこに人生観が絡む、という見方をすると面白いし、他人の実験を見るときの視点がまた一つ増えたので知れて良かったです。

 

 

1年生の時に基礎的な実験はしていたのですが、今までの私は実験結果分析やその考察ばかりに目を向けて、実験動作を軽視していたのではないかと気づきました。

 

詳しく実験について解説してくれ、質問にも丁寧に答えてくださった准教授に大感謝です。

 

2.特許がらみの研究の可及的速やかさ

 

私は直接関わっていませんが、先輩が特許がらみの研究を絶賛進行中でした。

 

特許については、授業や本でどれだけ大切なものか、世界中の人がそれを取るためにどれだけ躍起になっているかをある程度知っているつもりでしたが、

そういう研究を身近に見て、セミナーでの実験報告と議論を聞けたのは大きかったのではないかと思いました。

 

とにかく裏付けが取れて、有力なデータを一刻もはやく取って戦略を立てようという感じで、それでも懸念点と向かい合わせ、という印象でした。

 

 

3.徹底的にデータを疑うこと

 

実験報告などで議論を聞いていると、そのほとんどが「疑い」であったことに驚きました。

「このバンド・凝集体は○○○○という可能性はないの?」「△△はあることは確認が取れてるの?」というような質問が目立ったかなあと思います

 

ここからは完全に今の私の見解なんですが。

 

見ている中で実験から得られるデータがシンプルなものが多かったんですよね

SDS-PAGEとかパルスチェイスとかです。

 

なので、きっとそのシンプルさ故に実験結果を得るに至った様々な要因の複雑性が見えにくいんだと思います。

 

だから一つの結果から様々な可能性を一歩踏み込んで考えなくちゃいけない。

逆に言えば、見たい結果を得るためにはその他の可能性を排除していきながら実験しないといけない。緻密な実験計画が必要。

そうしないと「よく分からないデータ」を大量にとってしまいかねない。

 

そして、他の研究グループが出した論文についても「ここのポイントが不自然・怪しい」という風に先生方がよく指摘していて、

 

私には皆さんが目の前のデータを徹底的に疑っているように見えました。

 

そうやって、科学が積み上がっていくのかなあと思いました。

そういえばこの前読んだ本にも繰り返し疑うことの大切さが書かれていましたね。

 

 

sike-science.hatenablog.com

 

 

私も目の前の現象に対して疑いの目が広く持てるようになりたいです。

勉強していく中で、視野を広げ、深い思考をもてるように。

 

私生活では他人のことはまっすぐ受け止めて信じるタイプなんですが笑。

 

まとめ

 

初めて触れた研究室生活は面白かった!

 

本で読んだり話を聞いたりするだけでは得られない様々な経験をさせていただいて、研究室の方々にはとても感謝しています。

 

そして、自分が将来どんな研究がやりたいかも、見えてきた気がします。

それについてはまた今度話そうと思います!

 

ここで話したことは私が行った一つの研究室のことで、研究室の雰囲気とかは十人十色だと思うので参考にならない場合もあると思いますが、

共感や別の意見などをコメントやTwitterでもらえると嬉しいです。

 

ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございました。