読書記録「創薬科学入門」

 

テストが終わり夏休みに入り、本を借りてきました!

 

今回紹介するのはこちらです

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創薬科学入門」 改訂2版  佐藤健太郎 著

 

創薬に興味がある、将来創薬がしたいという全ての大学生におすすめしたいです!

 

著者はたくさんの科学系書籍を執筆していて、ウェブサイト「有機化学美術館」の運営者であり、Twitterでも有名なサイエンスライター佐藤健太郎様です!

blog.livedoor.jp

 

この本について一文でいうと、

 

「薬はいかにして創られるか」が著者の製薬会社で研究職として働いていた経験をふまえて系統だてて語られていて、医薬の歴史からこれからの創薬を見据えた本

 

となっています!

 

<目次>

 

本の構成

大雑把な構成は以下のようになります

 

そもそも医薬とは何か、どうあるべきか

創薬の一連の流れとそれを支える技術

医薬のジャンル別解説

抗生物質・抗ウイルス剤/高血圧治療薬/高脂血症治療薬/抗がん剤/糖尿病治療薬/精神病治療薬/鎮痛剤/新しいタイプの薬)

 

加えて話の流れにそって更に踏み込んで用語を解説するコラムがふんだんに盛り込まれていて、飽きずに読めるのもポイントです!

 

章の終わりには要点のまとめが載っていたりしていて

とても整理されていて読みやすい本だと思います!

 

本の特徴

では、この本の特徴を語っていきたいと思います!

 

実際に製薬業界の内側にいた人から語られる創薬

 新しい薬が世に出るまでにはたくさんの工程があって、それに伴いたくさんの人の努力の上に成り立っています。

 

実際に十数年間製薬業界に有機合成の立場から携わった筆者によって語られているため、その仕事がどのくらい大変/難しいのかが読者に伝わりやすく、どんな出来事が業界にとって衝撃だったのかも分かりやすく知れて、製薬業界用語も少し知ることが出来ました!

 

どんな薬にどんな風に市場が広がっているのかも知れるので、

将来製薬業界に携わりたいと思っている人にはもちろん、投資を考えている人にも参考になるのでは、と思いました。

 

それぞれの医薬や技術の長所と短所が明記されていて流れが分かりやすい

ある技術や化合物を紹介する時、論文や研究発表では従来のものや類似物と比べての長所や改善が必要な点がはっきり示されていますが

この本もしっかりそれらが明記されていたのでそれらの技術や薬の関係がすっと頭に入ってきました。

 

「この薬のこの点がこういう仕組みのせいで悪かったからこう工夫してこんな新しい薬が出来た」

というような流れが全部解説されているので、納得しながら読み進めることが出来ました。

 

図や構造式が多くて分かりやすい

下は本書のある1ページなんですが、

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だいたいのページがこんなふうに図がかなりの割合を占めています

 

著者が有機化学者なだけあって、解説される薬のほとんどの構造式が同じページに載っていて、勉強している人にとっては薬のイメージがとても湧きやすいです!

有名な薬・大ヒットした薬の誕生がドラマのように知れる

薬の紹介がたくさん載っていて、その多くが授業で習うような有名な薬だったり、世界中で大量に売れた薬でした!

 

こんな歴史やこんな背景があったのだとか、研究中の偶然や粘り強い研究者の努力も知ることが出来て、

ただ薬の名前を紹介するだけじゃなかったのが良かったです!

(薬の勉強しててほんと思うのですが、薬の名前と少しの特徴だけ説明されてもカタカナ暗記大会になってしまって全然頭に入ってこないんですよね笑)

 

感想

この本、図書館で借りてきたのですが創薬研究のエッセンスが広く詰め込まれていて、買って手元に置いておきたいと思うくらい、読んで良かったです!

 

薬が出来るまでの流れは薬学部の講義で何度か説明されるのですが、私が受けたものは正直さらっとしていて無機質な説明でした。(薬が出来るまで○年かかり、研究初期段階から実際に薬として生み出されるのは○分の一、というような数字ばかり強調されていたり。。。

この本からは薬を患者へ届ける想いや創薬ならではの大変さ、やりがいなどが文中の所々に感じ取れて、身にしみて理解できた気がします。

 

あと、私はブログタイトルにもあるように将来創薬の研究がしたくて勉強しているのですが、「医薬は大量生産出来なければならない」という重要ポイントをいままで軽視してしまっていたことに気がつきました。

 

医薬は患者の命が関わっているので「本日売り切れです。入荷までお待ちください」では済まされないということ、

実験室レベルでは問題なく合成できても、工業レベルで安全に有機合成するにはまた別のメソッドが必要でそれができないとまず新しい薬として承認されないこと、

天然物から取れる化合物を大量合成する大変さ

 

などなど、知れて良かったです!

薬を見たとき、「どんな風に大量合成されてるのか?」という視点を持つことが出来ますしね!

 

そして全体的に無駄の無くて綺麗なのに初学者にも分かりやすい文章で凄いと思いました。

私も文章を書くことが好きでブログを書いていて、ライティングスキルを磨きたいんですがどんな形であれ「人に伝わる文章を書く」ってのはなかなか難しいなあと悩むことばかりです。まあこうして悩むことも好きなんですけど。

 

最近になって佐藤健太郎様を知ったのですが、有機化学者・サイエンスライターとして活躍されていて新しいことにもどんどん挑戦している様子で、とても尊敬しています。

他の著書も読んでみたいと思いました!

 

まとめ

 創薬に興味があったら読んでみよう!

 

私は今薬学部2年生なのですが、専門科目を少し勉強して身についてきたこの時期にちょうどいい読みやすさでしたし、

基本のところから解説してあるので一年生、他分野の方にもおすすめです!

 

ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。

 

専門知識を勉強している段階の身ですので、もし何かご意見・指摘等ございましたらコメントしてくださりますとありがたいです。